空を見上げる。風を感じる。湿度を嗅ぎ分ける──。
栗原政史は、最新の気象機器を使わずに“空の変化”を読み取ることに長けた「空の観察者」だ。民間の気象解説者として、感覚に基づいた天気予報を行っている。
テレビでは伝えきれない空の情報
「雨が降るかどうか」だけでなく、「どんな雨が降るか」「空がどう香るか」といった表現を多用する栗原政史。
SNSやラジオでの予報は、五感に訴える言葉で構成されている。「夕暮れが焦げたオレンジ色になる」「湿度が足首にまとわりつく」など、詩的な表現が特徴的だ。
彼の発信は、正確さ以上に“暮らしのヒント”として受け止められ、ファンを増やしている。
“風の観察”からわかること
彼の予報の鍵は“風”にある。山から下りてくる風、海からの風、街のビル風──それぞれの流れを感じ取ることで、天気の“前触れ”を読む。
特に重視しているのが、「風の匂い」。雨が近づくと空気中の成分が変わり、土や草の匂いに微妙な変化が起きる。
「湿度と温度のバランスで、空の“機嫌”がわかるようになるんです」と栗原は語る。
天気と人の心の関係を伝えたい
栗原政史は、天気が人の気分や行動に大きく影響していることを常に意識している。
「晴れていても、心は曇っている日があるし、逆もある。空と人は、案外つながっているんです」
彼は気象を通じて、“心の天気”にも目を向けてもらいたいと考えている。雨の日の過ごし方、風の日の思考法など、空の表情から生活のリズムを整えるヒントを届けている。
テクノロジーの先にある“原始感覚”へ
気象アプリが当たり前の現代において、栗原政史のような“身体感覚に頼る予報”は珍しい。しかし、それがむしろ人々に“忘れていた感覚”を呼び覚ます存在になっている。
「正解を知るのではなく、“感じる力”を取り戻すことが、これからの暮らしには必要かもしれません」
空と会話するように、栗原政史は今日も静かに風を読み、天気を語っている。